■ 「発心の道場(徳島県)」 ■

発心(ほっしん)= 悟りを求めようと一念発起する、発心の道場(徳島県)と云われる。 阿波の国は、弘法大師が苦しむ人々の救済を発願をしたことから、「発心の道場」と云われます。所願成就を願っての修行の旅の始まりです。

四国の東部に位置する徳島県は県内に二十三寺が点在し、遍路の基本的な事に気づかされ修得する道程である。


■5月9日(水)天候 雨と雷、朝夕曇り■   自転車 Odo 100.9-139.3km (走行キロ38.4km)

 7時
 翌日は各自出発!
白衣を着て出発! 「ぐるっとしんごさん」は自転車の整備

  …ぐるっとしんごさんから貰った映像(右の映像)…

7時前に鴨の湯遍路宿をスタート、今日から別々の行動になります。 体力差があるから、それぞれのペースで遍路した方がいいかもしれない。 顔立ちのきりっとした一番若い青年は歩き遍路の為、一番先に出発していった。

昨日まで一緒の横浜のYさんと別れ、12番焼山寺への遍路コースも別コースになりました。 30歳の若者(仮名ぐるっとしんごさん)は自転車の整備をすることで最後になり、私は梨の木峠越えで焼山寺に向かいます。
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梨の木峠は標高410m、その後、標高85mまで下りて、標高700mの焼山寺に向かいます。
遍路宿からゆるやかな登り坂になり、これなら調子よく行けるかなと思ったら大きな間違いでした。 「昨日と全然違う遍路だぁ〜!」登り坂は急登になり、自転車から降りて自転車を押し上げるようにして歩いて進みます。

休むにしても自転車から手を放すと、自転車そのものが下へズルズルと戻ってしまうので、スタンドを足で抑え、前輪の方向を固定させるため、 手を添えながらの休憩が続きます。

50m、100m、200m進んでは同様に休み、息は「ぜいぜいハーハー…」蒸し暑く発汗が止まらず、 飲み物は受け付けるが空腹感が無いから食欲はわかない!
そのうちカーブ地点の外周端を通ると坂が緩やかになるのと、自転車を置けることに気が付き、以降休憩時にはその端を利用するようにした。
雨が降り出し、雷も近くになり、全身が発汗と雨で、ずぶ濡れ状態! 「なんでこんなことしなきゃならないんだ!」と憤りを自分で感じた。


峠の中程で下を向き、ひたすら押し続けていると犬の吠えるのを聞く。 前方を見ると吠えながら野犬?が道路中央から少しずつ近づいてきます。 その距離50mぐらいになり、お互いにらみ合いの状態で15分ぐらい立ち往生!「どうしよう?」

その時、後ろから地元の軽トラックが通り「犬を遮るからその間に通過しなさい」と言われた。 我に返って自転車を押し上げて200mほど過ぎて後ろを見ると林の中に家が隠れるようにして建っていた。 どうやら放し飼いの犬が計4匹いました。(犬は繋いでおきましょう!)


無事通過して、無言で押し続ける自分に、雨はシトシトと降り、雷がピカピカと山全体を包みます。
「俺は何しているんだろう?」自問自答しながら梨の木峠の頂点に着くと、今日の仕事はもう終わりの気分になった。 しかし焼山寺は、まだまだこの先はるか遠くにある。

出発して2時間、自転車を押し続けて峠越えし、稼いだ標高差の分だけ、下り道は颯爽と走ろうとスタートしたら、 峠から先は舗装が良い所だけでなく悪路の急坂です。 タイヤがパンクしないようにスピードを落とし、路面に注意しながらの走行。 気分的には軽快のイメージでなく、冷や冷やの気分です。


阿川地区に近づいた頃、後ろから軽快に自転車ライダーが近づいてきた。 「カロリーメイトをあげましょう!頑張ってください!」とお接待を戴いた。 手を拝みながら受け取り「ありがとうございます」と答えて、食欲は無いが水で胃に流し込んだ!(感謝!)

下がった標高の阿川地区から再び400mの山道へ自転車を押し上げて進み、途中で遍路地図を見直してやーめた! 阿川地区の郵便局に戻り、焼山寺までの距離は大幅に増えるが緩やかな登り坂のルートを教えて貰う。


阿川郵便局から鮎喰川に沿って20号線を登り、神山町へ向かいます。 神山町の城西高神山分校から43号線を走って行くが、鍋岩地区までの半分は自転車から降りて押し歩きの状態でした。 梨の木峠越えで、エネルギーを使い果たした感じで、 鍋岩地区のバスターミナル前で休憩して、焼山寺までの残り約6kmの坂は、今まで経験した事のない急登な登り坂になった。 100mがなかなか進めず、10m単位の積み重ねを続けながら自転車を押し歩く。

← ぐるっとすんごさんが撮影したやせ我慢の笑顔…

急坂をマイクロバスや軽自動車、バイクが悠々と登っていく。 その脇を少しずつ、押し歩き自転車遍路で登って行く。 「ぜいぜいハーハー…」、「なんでこんなことしなきゃならないんだよぉ!」、「遍路なんてやめちまえ!」と自分の心の悪魔が囁いている!

地獄の試練を体験する!自転車も油断すると前輪の方向が変わり転倒しそうになり、後方へズルズルと落ちていく傾斜だ。


前輪にカメラバックと貴重品、地図が約5kg、後輪にはママチャリの籠に登山リュックや納経バックが約26kgの負担がかかっている。 暫く押し歩くと、カメラを捨てれば確実に4kgは楽に! 後ろに、着替えや自転車修理道具など、雑多なものが入ったリュックなんか捨てちまえ!と再び、心の悪魔がどこかで囁く!

俺は何で遍路してんだと思いながら、自分との戦いに明け暮れる。今日は水分とお接待戴いたカロリーメイトしか口にしてない。 それでも空腹感が無い!
焼山寺まで、残り2kmぐらい(実際は判らない)で、昨日共にした自転車遍路の横浜のYさんが降りてきた。 続いて、ぐるっとしんごさんが降りてきた。二人とも焼山寺で私を相当待っていた様だが、時間の制約で、それぞれ次の目的地へ向かった。

■梨の木峠越えの映像…山路で休憩時に撮影した映像を時系列で12枚掲載。

6時53分


7時25分


8時16分

7時11分


7時54分


9時 7分
地図上は「梨の木峠」、案内板は「梨の峠」だった
9時 9分


9時32分


9時39分

9時22分


9時33分


10時42分

…梨の木峠越えの映像はここまで…

焼山寺仁王門前に到着したのが15時20分。 納経終了時間の17時に間に合うか心配だったが、仁王門が見えてきた時はホッとした気持ちになった。 ここから駐車場までもうひと登り。境内まで押し上げて自転車を柵に寄せた。 朝7時前に出発して、9時間近く自転車で山道と格闘してきた。

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■第12番札所 摩廬山 正寿院 焼山寺■
     宗 派: 高野山真言宗
     本 尊: 虚空蔵菩薩
     開 基: 役行者小角
     創 建: 弘仁6年(815年)
     真 言: のうぼう あきゃしゃ きゃらばや
          おん ありきゃ まりぼり そわか
     御詠歌: 後の世を思えば恭敬焼山寺 死出や三途の難所ありとも
★彡 第12番札所 焼山寺の拡大映像

第12番札所 摩廬山
 正寿院 焼山寺
  15時20分
仁王門

仁王門を振り返ると…

山裾に沿って堂宇が…
焼山寺のシンボル巨木の杉

広い境内

手水舎

焼山寺は標高938mの焼山寺山の頂上近くにあり、四国霊場でトップクラスの高い山岳札所です。 剣山などの山々が広がる眺望は素晴らしかった。 境内に足を踏み入れて気が付くのは、巨木の杉の多さでした。 杉の巨木は徳島県の天然記念物に指定されているそうです。 仁王門付近に数10本、本堂西南にも、そして奥の院の山中に100本余りあるという。 推定樹齢は約300年で、焼山寺のシンボルです。

鐘楼

本堂

大師堂

十二社神社
寺坊

大師堂

三面大黒天


石塔

納経をして境内の撮影を始めた時、1番霊山寺で遍路指導をしてくれたN僧に逢った。 「えっ!何で?」最初に発した言葉です。 まさかここでN僧と再会するとは思っていなかった。 二人で境内から見えるはるか下方の山野を見下ろしてしたら (9時間近く辛い思いして、自力で自転車を押して来たと思ったら)、 自然に涙が出てきて、N僧の前で涙を見せてしまった。

ここまで自力で自転車を押してきたんだぁ!
N僧に撮ってもらいました。

早朝から9時間近く、ひたすら自転車を押し歩き、今日一日を過ごしたことで、苦しかったがやり遂げた達成感がありました。 N僧から「今夜はまた野宿ですか?」と聞かれ、身体が汗と雨で濡れていたので、 N僧から紹介して戴いた鍋岩地区の「遍路宿すだち館」に宿泊することにした。

 焼山寺を下山…  16時








6kmの下り坂は撮影しながら僅か22分で鍋岩地区まで下りきた。 N僧から連絡があったようで到着早々、すだち館のご主人がすだちジュースをお接待してくれました。(感謝!) 料金は1泊2食で4000円。
改めて宿帳に記帳しようとノートを見ると、 何と、私の自宅から1kmも離れていない住所が記入されていて、再度驚いてしまった。 結局、その人と同部屋泊することになりました。

鍋岩の「遍路宿すだち館」に到着!
  16時22分
鍋岩の遍路宿すだち館

そしてN僧から「夕食前に宿のお風呂でなく、送迎するから6.5km先の道の駅、神山温泉の日帰り温泉に行きましょう」と、声を掛けられ、 乗用車で送って戴き、1時間後に迎えに来てくれた。 さらに温泉料金はN僧に出して戴きました。(感謝!)
(N僧も別の家に泊まったようですが、翌朝は早出してお礼を言えなかった。)

道の駅神山温泉 入口中央がN僧 すだち館の愛犬

徳島在住の寿司職人の方が、今日遍路泊しており、持参した新鮮な魚をさばいてくれ、刺身は特別食となって美味しく戴きました。 宿のご主人夫婦は、気さくな人柄で、「遠慮しないで沢山召し上がってください!」と笑顔いっぱいで、すだち館は笑い声で大いに盛り上がった。

夕食後、宿舎に戻ろうと暗闇の中を歩いていたら、同宿する方が突然私の前から姿を消し、下の方から「うぅー」の声が…。 暗闇の中で「どうしました」と、目を凝らして見ると、道の側溝に身体ごと落っこちた! 急いで慌てず、身体の骨折などが無いことを確認し、静かに抱え起こして、取りあえず宿舎で手当て。 手や背中が血だらけだが、消毒して、翌日診療所に向かいました。
(神山温泉は最良のお勧めの温泉施設です。) 久しぶりに布団に包まり、今日の疲れを癒した!

  …四国自転車遍路 TOPへ…
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