■ 紀伊山地高野山霊場と参詣道 ■
四国遍路と云えば、八十八霊場の札所をお参りすることを云うが、結願するとお礼参りして満願成就するとあります。 お礼参りは厳密な定義があるわけでなく1200年も続く歴史の中でその時代時代に合った作法がおこなわれてきた。
何が正しいかは別として、四国遍路には多様性があってしかるべきと思う。 特に近年は遍路の目的も手段も多様化してるから、遍路する人々の心の思いの数だけ満願成就への思いがある。

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■ 総本山金剛峯寺(世界遺産) ■

遍路で着用した白衣を着用し、納経バックも持参してるので手持ちの荷物が多く、蒸し暑い参拝日です。 四国遍路の高野山での納経は奥の院と思うがが、金剛峯寺でも納経印を貰いたかったので、 カメラバックは車に残し、カメラと三脚、そして三脚ケースには傘も入れた。

総本山金剛峯寺の境内は高野山全体を指す。 一般にお寺といえば一つの建造物を思い浮かべ、その敷地内を境内とするが、高野山は「一山境内地」と云い、 高野山の至る所が、お寺の境内であり高野山全体がお寺となる。 しかし明治時代以降は、高野山真言宗の管長が住むこの総本山寺院のことを金剛峯寺と呼んでいる。 歴史を紐解くと真言宗の総本山としての高野山全体の歴史、信仰、文化財を知る事ができる。 自分の知識が豊かになることは嬉しい。

 金剛峯寺正門 人が途切れるのを待って撮影

「本堂はどこ?」という問いは、高野山の本堂は壇上伽藍の「金堂」が総本堂になるそうです。 高野山の重要行事は金堂にて行われている。 山内に点在するお寺は塔頭寺院と云い、現在117ヶ寺あり、その内53ヶ寺が宿坊として高野山を訪れる参詣者へ宿を提供しています。 私達は金剛三昧院に2泊予約した。

金剛峯寺正門

金剛峯寺駐車場前から入る門が金剛峯寺の正門です。 1593年(文禄2年)に再建された門です。 右手にある小さな入口は一般の僧侶が日常使用しています。 昔は正門を出入りできるのは天皇、皇族、高野山の重職だけと聞きます。 高野山では門の出入り一つでも、厳しいルールが存在していたようです。

境内から見る正門 本殿

天水桶…
金剛峯寺の屋根は檜皮葺で、屋根の上に天水桶が置かれている。 普段から天水桶に雨水を溜め、火災などが発生した時に桶の水をまいて類焼を防止する役目をする。 そのため屋根に容易に登るために伽藍には梯子も常設されていた。

鐘楼堂…
正門をくぐって右手に鐘楼堂がある。 金剛峯寺の前身の青巌寺の鐘楼堂です。 火災で類焼後、本殿などの建物と同時に鐘楼堂も1864年(元治元年)に再建された。 桁行三間、梁行二間、袴腰付入母屋造りの形式で県の重要文化財に指定されている。

境内 鐘楼堂

経蔵…
正門をくぐって左手に経蔵がある。 1679年(延宝7年)寄進されたもので釈迦三尊が祀られている。 他で見られる経蔵とは異なり結構大きな建物です。 近づいてみると屋根が高いことが実感できる。

経蔵

本殿…
金剛峯寺本殿正面には大玄関、小玄関、一般参詣者入口がある。 今日は日曜日、観光客と遍路のお礼参りの人と半々ぐらい。 本殿正面で読経して大玄関、小玄関を撮影し一般参詣者入口へ向かう。 本殿には大広間、持仏間、梅の間、柳の間が続き、持仏間には本尊、弘法大師が祀られている。

本殿大玄関

本殿大玄関

本殿正面…ここで読経
本殿大玄関

本殿小玄関(右手)

内拝、納経受付入口

本殿内に入り撮影時、襖は撮影しないでと云われた。 カメラのストロボをOFFにして、ISO感度を上げて設定。 妻のカメラは収納し本殿内を進む。 シャッター速度が1/160くらいになった。 お寺の中に入るとヒンヤリして涼しく感じる。

大広間にある金剛峯寺の扁額

梅の間にある三鈷杵

隅々まで手入れが行き届いた庭

持仏間には、本尊に弘法大師が祀られている

輿(人を乗せ人力で持ち上げて運ぶ乗り物)



こうやくんと出会った

通路を進んでいくと、こうやくんと出会いました。 数枚撮影したら付き添いの方が「撮影しましょう」と声を掛けてくれ、妻と記念撮影してもらいました。 人気が少ない廊下で声を掛けてくれて感謝です! 実際にこの目で見れて、記念撮影を残せたのが嬉しかった。
(5月〜11月まで毎週日曜日は高野山の金剛峯寺、壇場伽藍、その他金剛峯寺境内各所を回るそうです。)



静寂感漂うヒンヤリとした回廊


落ち着いた雰囲気のある回廊を進むと蟠龍庭と呼ばれる石庭が見えてきた。 弘法大師御入定1150年に造園され石庭の広さは国内で最大級を誇る。 石庭を眺めながら回廊を進んで新別殿に向かう。 参詣者が思ったより少なくノンビリ見学ができる。

蟠龍庭 蟠龍庭

新別殿…
1984年(昭和59年)、弘法大師御入定1150年の際、参詣者の接待所として新設。 鉄筋コンクリート造りで入母屋造りの様式で建てられた。 169畳の大広間は一般参詣者の休憩所として開放している。 椅子や畳に家族連れやグループが休憩していた。 私達も案内され、お茶とお菓子をお接待された。 ひと時の休憩ですが妻は喜んでいる。 広間には4、5人が各所に分かれていたが、弘法大師尊像前は人が少なく、その前に着座して尊像にお詣りし休憩する。 また、その間に廊下に出て蟠龍庭や奥殿を別の角度から撮影した。

新別殿接待所

新別殿の廊下
弘法大師と曼荼羅を撮影

新別殿の廊下に出て別殿を撮影

休憩も終わり回廊に戻る。 蟠龍庭が広がりを見せて雰囲気が良くなってきた。 各殿を囲むように蟠龍庭が築かれ、蟠龍庭の変化を楽しめる。 各殿の各部屋には日本の有数の画家の描いた四季の花鳥、野山草創の風景などの美しい襖絵が描かれ、淡い電球の光で息をのむ美しさです。


蟠龍庭の石庭は、雲海の中で雄、雌の一対の龍が向かい合い、奥殿を守るように表現されている。 龍を表す石は、弘法大師誕生地の四国の花崗岩が、雲海を表す白川砂は京都のものが使われている。 白川砂には落ち葉一つも見ることが無く、庭の手入れも毎日が修行と思う。

奥殿(非公開)と蟠龍庭 別殿の廊下を進む

奥殿…
金剛峯寺の貴賓室の役割をする所。 1934年(昭和9年)の弘法大師御入定1100年の際に建立された。 元々この地は木食上人の興山寺跡で興山寺東照宮がありました。 その後、奥殿、別殿が建立されるまでは高野山大学、中学があったという。

☆彡  金剛峯寺 正門、鐘楼堂、経蔵、本殿、奥殿と蟠龍庭 の拡大映像 ☆彡

勅使門 見事な蟠龍庭の景観

真松庵(非公開)と阿字観道場…
蟠龍庭の一隅にある茶室は、1965年(昭和40年)の高野山開創1150年記念法会の際、松下幸之助氏より寄贈され、 三間と水屋で本格的な茶室造りで真松庵と呼ばれる。
阿字観道場は阿字観と云われる真言宗の瞑想法で真言禅とも呼ばれる。 この瞑想法は心を落ち着かせ、深い内観を通して自身に内在する仏性と接触を行うと云う。 一般でも申込みで瞑想法を体験出来ます。

真松庵(非公開)と蟠龍庭

阿字観道場


伽藍を見て回る中で、高野山競書大会の優秀作品展示場があった。 それぞれブロックに分かれて展示してあり、父兄と見られる夫婦が自分の子供の書を記念撮影していたり、仏教の梵字のような筆跡もあります。 久しぶりに美しい書道を見る事ができて得をした気分です。










書院上段の間…
上段の間には上々段の間と装束の間があり、壁は総金箔押しであり、天井は折上式格天井の書院造りの様式になっている。 上段右側にある小さな房の着いた襖は武者隠しと云い、襖の向こう側に稚児の間がある。





装束の間

稚児の間…
この部屋は、先の上段の間と接している武者隠しの間で、天皇に随行した人が不寝番をした部屋です。 地蔵菩薩像が祀られている。



稚児の間

各所にある天水桶
本殿の奥へ奥へ進むと、奥殿に真然廟がある。  空海の死後、荒廃しつつあった高野山(金剛峯寺)の復興、発展に尽力した。 高野山第二世伝灯国師真然廟は金剛峯寺の最奥にある。




高野山第二世伝灯国師真然廟

土室…
この部屋は囲炉裏の間で、土室と呼ばれている。 土室は土を塗り固めてた部屋という意味で、高野山の冬場は非常に厳しい土地柄で、暖をとるための工夫として土壁で囲んだ部屋の中に囲炉裏を設けた。 囲炉裏は天井まで4本の柱と壁が立ち、煙を天井上から屋根の外に抜くようにできてる。

2021年、この土室にNHKスペシャルの番組で、高野山が弘法大師空海により開創されて1200年を向え、 世界的な日本画家、千住画伯が障屏画、瀧図と断崖図が金剛峰寺に奉納された放送を視聴した。 囲炉裏の間に25m以上の瀧図、茶の間に16m以上の断崖図が奉納されるまでの経過を知り、大きな感激を体感した。

土室

台所…
食物保存庫は床下収蔵や天井から吊り下ろした梯子がある。 建物は長い歴史の知恵と工夫を見る事ができる。 水場は湧き水を高野槇の水槽に溜めてあり、大きなかまどは現在も使われています。







左の映像の煙抜きを真下から上方を撮影↑
炭をおこす場所も、上には防火対策として大きな煙突として工夫してある。


台所は金剛峯寺主殿と共に昭和30年代に県の文化財に指定されてた。 多勢の僧侶の食事を賄ってきただけに釜も大変大きく、柱や梁も煤で真っ黒になっていました。 大釜は二石釜といい、一つの釜で約7斗(98キログラム)の御飯を炊くことができ、一度に2000人分のご飯が作れるという。






最後は巨大な高野杉を見学し納経所に戻り、ここで納経印をお願いした。 受付で了解を得て、納経をしている処を撮影! 納経帳に筆が滑らかに記されていくのを見て感嘆の思いで見惚れてしまった。(感謝!)




下門 境内から 下門 外観
本殿を出て一段落したが境内では休憩ができない。 そこで下門から金剛峯寺を出る。 妻と相談!「この後どうしようか?」、「このまま女人堂まで行ったら」の妻の一言で女人堂へ向かう。
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