■ ユネスコ無形文化遺産 細川紙 ■
もうすぐ春が近づく中で先般、日本の和紙がユネスコ文化遺産に指定されたと報道された。 和紙については日本を旅する中で時々、各地の和紙について見聞してきたが実際に工場に行ったことが無かったことで、 これを機会に自分の足で見聞してみることにした。 ユネスコ文化遺産の中で、近く身近な所の埼玉県小川町の和紙について学べる機会を作った。 プランは東武東上線で小川町駅までは電車を利用して小川町内については輪行可能の自転車を利用する試みになる。


東上線成増駅から急行で小川町行電車に乗りこむ。 分解した自転車の輪行袋は自宅から駅までの7分間は肩に食い込み非常に痛かった。 肩当の必要性を実感しながら駅内ホームでまず一枚撮影する。 成増駅で乗車して車内でも一枚撮影して暫くすると、乗客が多くなってきた。 土曜日だが一般の人も多いが、あきらかにハイキングや小旅行の支度姿が多くなり、 輪行袋も車内の片隅に寄せて置く。

車内の混雑も森林公園駅で空いてきて車内は明らかにハイキング姿が多くなった。 終点の小川町駅に到着し、乗り換えて先に向かう人たちと、小川町で下車する人たちに二分する。 最後に下車してホームを端から改札口に着いた時は最後になっていた。

成増駅ホームで… 森林公園駅を過ぎると空いてきた

トイレして改札口を出ると駅前にロータリー広場があり、左手にタクシー乗り場、右手にバス乗り場がある。 タクシー乗り場の端っこで輪行袋を下ろし、まず一服する。 喫煙できる灰皿があると一安心する。 最近は喫煙できる処が少なくなった。 急げば10分もあれば組み立てはできるが、仕舞う時のことも考え、チェーンカバーやストラップ、バックルベルトを小袋に丁寧に収納する。 自転車は軍手を利用して5分ほどで組み立てた。工具はいらないから楽です。 リュックに荷物を収納してデジカメを準備する。

小川町駅ホーム

駅前
改札口

駅前商店街

まず最初に駅から観光案内所を探す。 駅前商店街に和紙の文化遺産の幟が列をなしていたから聞いてみる。 駅前商店街の中程に「楽市おがわ」の観光案内所があった。 ここで細川紙の取材のできる所について説明を受け、案内地図を貰った。 係の人が自転車と知って町中の移動コースにマーカーを引いてくれた。 ここでは貸し自転車もあった。

観光案内所「楽市おがわ」

商店街は清掃が行き届いている
観光案内所から駅を振り返る

古風な建物も…

町の中心の商店街は整然として道路が綺麗だった。 自転車を引っ張りながら歩道を歩いて商店街を散策する。 所どころに古い建物があり雰囲気は良い。 暫く歩いて突き当たった道路が国道254号線で、ここから自転車に乗って、向かうは小川町和紙体験学習センターです。


広い道路を走るより町中の路地を走って学習センターに到着。 途中で和紙の見学ツアーのグループを追い越したが撮影準備してたら追い付かれてしまってセンター前は一際賑わった。 グループが会館内に入って一段落してから会館の撮影を始める。 建物の様子を見ると旧埼玉県製紙工業試験場だった。 試験場の機材を引き継いだ充実した設備で、原料の仕込みから紙漉きに至るまでの和紙作りのすべての工程を体験できます。

小川町和紙体験学習センター (旧埼玉県製紙工業試験場)




正面玄関から事務室が続き、奥には和紙の工場の建物が続いている。 正面玄関の両側に色々な和紙が展示してある。 昔は商売から娯楽に至るまで、日常生活に和紙が利用されていたことがわかります。 また、単色和紙が色とりどりに染色され、販売価格も手ごろの値段だ。 展示してある商品には販売価格が掲示してある。

折り紙用の単色和紙

優雅なうちわに変身
商売用の大福帳

和紙の原料(半製品)

葉書も和紙だと高級感を感じる。 桜餅ならぬ桜で染色した和紙は日本の職人の心意気を感じた。 原色に近い和紙より中間色のやさしさを感じる和紙は優雅さを感じる。 和紙から連想するのは、古来から続く日本人の感性が脈々と受け継がれていることです。






外観に似合わず応接室の造りは日本の建築を見ることが出来る。 そして室内の和紙の灯りはその最たるものではないだろうか。 もう一つの部屋では和紙の染色技術が展示されている。 染色と言うと着物を思い浮かべるが、強靭な和紙に淡い染色が施された和紙を見る事ができる。






普通の瓶を和紙で包むと高級感を感じるのは何故だろう? 時々見かける日本酒の包装紙に和紙が使われていると、何だか特別の銘酒に見えてしまう。 一般的なラベルよりも、ここしかない特別感を醸し出してくれる和紙は魔法の包装紙と言えるのではないか。

和紙は魔法の包装紙

漉き舟と漉き桁
小川紙の歴史を知ることが出来る

部屋の一室に小川紙の歴史を展示してあった。 正倉院の文書に小川和紙の記述が見られ、帰化した高麗人によって、その技術が伝承されたという。 関東外秩父一体に伝承され、現在では小川町と東秩父村で脈々と受け継がれている。 旧試験場の管理棟から中庭に出てみる。

管理棟の奥には作業棟が続く 試験場の宿直室?



■和紙の工程1
埼玉の和紙は細川紙と呼ばれ国産の楮(こうぞ:クワ科の植物)を原料としている。 楮のことをここでは『かず』と呼び収穫した楮は約70p位に切添えて保管している。 細川紙の工程は大きな釜の中に根元を下にし束にして入れ、蒸して表皮をむき取りやすくすることから始まる。 蒸した後、楮の黒い表皮を削り取り、白皮にするとともに傷なども取り除いていく。 良質な和紙を作るためのポイントと言えます。





■和紙の工程2
この後、仕上げた白い楮を釜で煮る作業で、煮たってからソーダ灰を入れる。 成分の炭酸ナトリウムが白皮を軟らかくし不純物を取り除き、白皮の繊維が細かくほぐれてくる。 煮終えた白皮は水につけてアク抜きと日光漂白され、篠竹で一本一本すくい上げ、付着している不純物を丁寧に取り除いていく、正に職人の世界に入る。 この後、紙漉きの材料に仕上げるため白皮の繊維をさらにほぐすため楮打ち棒で丁寧にたたいていく。



係員が説明しながら紙漉きを実演


■和紙の工程3
紙漉きに欠かせない材料に、もう一つねりの材料が必要になる。 トロロアオイという植物の根を叩いて抽出する粘り気のある液体が必要になる。 ねりは楮の繊維を水の中で程よく分散させ、浮遊させる働きをする。 紙漉きの過程では繊維をお互いにつなぎとめる作用があり、かつ粘着力が無いため、乾燥の時に紙を一枚一枚容易にはがすことが出来る。

簡単のようで、これが意外と難しい!

漉き桁内に漉き水が均一になるように…


■和紙の工程4
漉き舟と呼ばれる木の水槽に紙の原料となる漉き水(水、楮、ねり)を入れ、均等に分散させる。 漉き桁に漉き水をすくい上げ、何度か流し込んでは漉き簀(すきすのこ)の上に均等に繊維が行きわたるように繰り返し揺らしていく。 漉きあがった和紙は、かんだと呼ばれる紙床台(しとだい)へ一枚一枚積み重ねていく。 (トロロアオイという植物の根を叩いて抽出した液体が含まれているから、紙床台に重ねても、後から一枚、一枚綺麗にはがすことが出来る。)

予約した見学グループが来た
紙漉きの工程の説明を受けているうちに、予約した体験見学ツアーのグループが来て、私への説明はこれで一時中断になった。 紙漉きの工程の説明をほぼ終えていたのでお礼を言って終了となった。 紙床台から以降の作業はパンフレットで十分だった。
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