■埼玉県小川町について
小川町は埼玉県の西部に位置し周辺は豊かな自然と外秩父の山々に囲まれ、低山のハイキングなどでシニア世代に人気がある。 町の中央部に槻川が流れ、古くから小川和紙をはじめ、酒造などの伝統産業があり、和紙は1300年の歴史を誇り、小川町は武蔵の小京都と云われている。
小川町和紙体験学習センターから埼玉伝統工芸会館に向かう。 会館は道の駅にあり、国道254号線沿いに直進すれば早いが、折角、輪行してきたから町中をのんびりと走って見ることにした。


学習センターから飯能寄居線道を走り、槻川遊歩道を通り、栃本親水公園まで走る。 ここから引き返す形で青山陸橋下を抜けて円城寺、見晴らしの丘公園、高西寺まで走る。 車両が少ないから風を切って走るのが気持ち良く、ストレスが発散できる。 見晴らしの丘公園へは登坂が急で、27段ギヤの変速機をフルに使って感触を確かめる。…でも途中で引き返した。 道の駅埼玉伝統工芸館へは裏側の遊歩道から自転車を引っ張って到着した。

道の駅埼玉伝統工芸館

道の駅で駐輪場を探す。  スタンドが無いから置き場所を探すのに苦労する。 地産の屋台のテントの人に自転車置き場を訪ね、スタンドが無いからどこか適当な所が無いか尋ね、程よい植木を囲い込む柵を教えて貰った。 広場の中央に駐輪して道の駅を見渡すと、鮮やかな幟がある建物が目についた。 入口に『祝 細川紙手漉き和紙技術 ユネスコ無形文化遺産決定』の幟がある。 中に入ると、ここは工芸品の物産館だった。 和紙工芸品の販売や展示場になっている。 そして和紙だけで五重塔や大きな建築物の模型が展示されていた。 入場料300円。


「楽市おがわ」の観光案内所で聞いたところでは、小川和紙の実演会場があるはずだった。 係員に聞くと別の建物で実演してるとのことで再度、広場に出て見ると地産の屋台のテントの奥にその建物を見つけた。 入口には半製品の和紙が展示してあり早速中に入ったが大勢の観光客でごった返ししていた。 それでも人垣をぬって奥に進むと実演会場入口は人垣でふさがっている。 少しづつ前に進んで中に入ると、観光客が一列になって実演の真っ最中でした。 観光客の流れが少ないから室内はごった返している。


和紙職人が説明と指導をしながら一般の人の実演を手伝っている。 「ワーワー、キャーキャー」言いながら手漉き和紙を操っている。 小川町和紙体験学習センターで説明を受けているから、和紙製造の工程の一部を撮影してゆく。 職人と観光客の腕が計4本で紙漉きの工程を体験していた。

漉き桁に漉き水をすくい上げ、何度か流し込んでは漉き簀(すきすのこ)の上に均等に繊維が行きわたるように繰り返し揺らしていくが、 素人では漉き桁内の波形がボチャボチャしてる。

漉き桁内の波形がボチャボチャしてる




紙漉きの難しさと漉いた和紙を和紙簀から剥がす工程も簡単に見えて実際には難しそうである。 最初、撮影した人はうまく剥がせず職人が実演して見せた。 次の人は中々器用で紙漉きから和紙簀の剥がすところまで自分で体験していた。 体験観光客が列をなしているから、和紙職人も忙しく額には汗がにじんでいる。





■和紙の工程5
和紙簀から剥がし、次の工程は『紙干し』で本来なら紙板(木の板)に一枚一枚貼って天日で乾燥させていく。 紙板で自然乾燥した紙には板の木目が残って独特の風合いが出来るが、今日では鉄板で乾燥することが多くなっているという。 折角、無形文化遺産に登録されたのだから紙板に戻ってほしいと感じた。

この後、どのように乾燥させるのか、興味を持って見ていたら、体験客の数をこなすためにドライヤーが待っていた。 紙板のまま隣のブースに移動して次の職人にバトンタッチする。 紙板をテーブルに置いてスイッチを入れるとテーブルの中央の幅1pの隙間から熱風が吹き出て紙端から一気に強制乾燥させていく。 乾燥するまで2〜3分の時間で濡れた和紙が乾いていく。 室内が蒸し暑いのは、このドライヤーのせいだった。

■和紙の工程6
和紙技術の最終工程は『紙揃え』と呼ばれ、選別作業がおこなわれる。 無傷で上質な和紙は『一の紙』、少しでもムラがあれば『二の紙』へと選り分けられ、一枚一枚丁寧に選別される。

ここでは観光客が自分の手掛けた和紙をいろいろ加工していた。 体験エリアの隣は工芸エリアで、大人から子供までテーブルに着席して熱心に自分の工芸を楽しんでいた。 和紙の絵馬を製作している人や、切り絵という難しい体験も楽しんでいる。 一番奥では和紙の折り紙に挑戦してる観光客もいた。

老若男女が楽しむ工芸教室




部屋の一番奥には小川町の人々が製作した和紙コーナーがあった。 和紙の自然な色を生かして製作したバラの花や雛人形などは和紙の工芸として素晴らしい工芸品に見えた。 平安時代の白は、このような自然な色に近いのではないかと想像してしまう。 室内撮影のため実際はもっと明るいが、漂白された現代の白とは全然異なった。






表皮を剥かれた楮の束もあり、日本を代表する折り紙は、和紙が染色されて鮮やかに生まれ変わっている。 工芸コーナーには名刺入れや札入、テーブルクロス等、日常目にするものが和紙工芸品として展示。













小川和紙体験センターでの見学も終わって最後に向かうは観光案内所で教えて貰った細川和紙職人の工房に向かった。 道の駅から数分の所にあり、『国指定重要無形文化財 技術保持者 久保昌太郎』さん宅です。 工房に到着して暖簾のある玄関から入ると工場があり、和紙や和紙工芸品の販売コーナーがある。

来店のチャイムを鳴らすと二階から女性が降りて来て訪問の主旨を伝えると、今日は道の駅の実演コーナーに出掛けていると言われてガッカリする。 平日はここの工房で体験、実演を行っているが、土、祭日、日曜日は道の駅に行っていると聞いて諦めた。 和紙技術者が少なくなって結構忙しくなったと奥様から話を聞き納得する。


1階のテーブルに座っていたお爺ちゃんが平日に来たらいいと教えてくれた。 お爺ちゃんも職人人生を歩んできたことで現在は隠居の身だと、入れ歯をモグモグしながら話す。 小川町和紙体験学習センターでは単独で係の人から説明を受けたことで、今回の細川和紙の取材は終了。 時間がお昼を過ぎて時間も大分余ってしまい、観光案内所で聞いた醸造所巡りに切り替えた。
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