■ 小川町の伝統地酒巡り ■

埼玉の伝統地酒で、小川町には3ヶ所の醸造所がある。 どちらも古くからの創業で、地酒として続いているとのことです。 小川町の3ヶ所の醸造所として、受け継がれてきた酒蔵は松岡酒造の『帝松』、晴雲酒造の『晴雲』、 武蔵鶴酒造の『武蔵鶴』があり、帝松と晴雲は若い頃に飲んだことがある。 今回は晴雲酒造と武蔵鶴酒造を巡って見る。


最初に向かうは晴雲酒造で久保和紙本工房から2q程離れた場所にある。 国道254号線を町の中心部を通り、東秩父村方向に向かう方角だが、 国道は通らず町中を走り、距離は長くなるが、のどかな風景を楽しみながら走らせた。 輪行の楽しみが増してきます。

晴雲酒造に到着したら観光バスが2台駐車していた。 ここにも観光客が定期的に来ることを知る。 醸造所と同じくらい広い駐車場の端に自転車を立て掛けて、晴雲酒造のお店を暫く眺めながら一服してると、観光客の団体が出てきた。 中にはこの時間なのに顔が赤い! 結構、試飲したのか饒舌な観光客をやり過ごし、醸造所の撮影から始まる。

醸造所の入口脇に煉瓦積みの煙突がある。 この煙突は晴雲のシンボルで、お米を蒸す熱源として石炭が使われていた当時の煙突と、説明書きがあった。 高さは当時は18mだったが、平成11年に約半分の高さに縮められたとある。 同時に中をくりぬいて、中から空を見られるようにしたとある。

煙突の入口 晴雲酒造に併設の玉井やの食事処
入口の暖簾と晴雲の酒樽、杉玉などを撮影し、玄関から店内を見ると観光客が少なくなって見学に丁度良い。 数人の観光客が赤ら顔でお酒の説明を受けている。 フロントで酒蔵の見学の主旨を話し見学の許可を頂く。




酒蔵の入口は土蔵の扉が…

ショップの横の細い通路を抜け、酒蔵の入口は土蔵の扉が開いていた。 中に入ると薄暗く、なるべくならフラッシュは使わないで撮影しようとISO感度を6800以上に設定してみた。 1階は出来上がった商品の箱詰めや梱包された木箱が置かれている。 この土蔵は見学用で古くから使用されてきた酒造りの道具や昔の器などがあるようです。 実際の酒造りは他の場所で製造されているようだ。






1階から2階へは天井が高いので階段が折れて途中に踊り場がある。 主人が2階の電燈を点けてくれた。 薄暗い階段横に大きな樽があり階段を上る途中で樽中を覗いた。 既に使用されてなく麹の臭いはしない。

説明では、この樽は『甑(こしき)』と呼ばれ、お米を蒸す用具で、下から釜で湯を沸かし、その蒸気でお米を蒸す道具だそうです。 甑の真ん中に穴が空いていて、その上に猿と呼ばれる木を置き甑布を敷いてお米を入れ、終わると布を掛けムシロを載せる。 仕込まれたお米は早朝に蒸気で約50〜60分蒸す。 蒸されたお米は放冷し粗熱を取った後、麹造りや仕込み用に使われる。

甑(こしき)

猿と呼ばれる木は別名『こま(独楽)』とも呼ばれ、釜から昇ってくる蒸気を均等に分散させるための小道具です。 甑の中央に逆さまにして置く。 名前の由来は猿の伏した形に似ているところから、又材質が欅で赤みを帯びていて、その色が尻の赤い猿を連想したとの説もある。


猿と呼ばれる木

大釜の上に甑を載せる

2階に上がると二つの部屋に区切られている。 最初の部屋は古くから秩父山系を源とする良質の水と造り酒屋として営んできた歴史を見ることが出来る。 造り酒屋として多くの見学者や観光客のファンが、細川紙に「小川町の日本酒」、「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」、 「SAKE GIN-JO」などの寄せ書きが飾られている。





■晴雲の名前の由来
初代中山徳太郎が富士山登拝の折り、山頂に立った途端に雲が切れ、一変した景色と、己の晴れ晴れとした心境を、 『仰ぎ見れば心も空か、すみわたる ああ晴雲』と詠んだ。 これが銘酒晴雲の名の由来と云う。





この奥が麹室




2階の奥は入口に麹室と書かれていて以前は麹室として使われていた場所でした。 天井の梁がむき出しでその分高く感じるが小窓しかない。 明かり取りから差し込む陽光が弱く、薄暗さは端部が見えない。 ファインダーから見える映像は暗すぎてピントが合わず、手動で合わせたが良い映像が撮影できなかった。 そのため麹室ではフラッシュを使用した。






部屋の周囲の棚に古くから使用されてきたお酒の容器や醸造の道具が展示してある。 面白い形の徳利や部屋中央で使用された荷揚げ用の木製滑車など長い年月の歴史を感じる。





その年に醸造されたお酒が賞を取り、その時の杉玉も天井に保管してある。 数々の賞で杉玉の数も多い。 杉玉に受賞年月が記されてあり天井や棚に置かれている。 太い天井の梁も見ることが出来て、今見ても頑丈そうな梁です。 軒は低いが天井を見上げると麹室は広く感じた。

階下から荷揚げ用の木製滑車




見学が終わって階下に下りる時は誰もいなくなった。 階段の所の2階の電灯SWを消してショップに戻り、フロントの係員にその旨を告げた。 この後、ショップで飾られたお酒を拝見した。 試飲してみたいが、今日は自転車があるからぐっと我慢する。 400ml位の手頃な容量でお手軽価格は嬉しいものだ! 味比べが出来ないからお土産には諦めた。










駐車場に戻って、もう1ヶ所の醸造元に向かう事にする。 地図では小川町駅に近いところだ。 自転車でのんびり町中を移動してコンビニ前で喫煙休憩する。

■関東灘の銘酒 武蔵鶴
武蔵鶴酒造は文政2年(1819年)創業の伝統と歴史のある酒蔵です。 この武蔵鶴も酒類品評会において1位受賞をはじめとして金賞など数々の賞に輝いている。 ここの特徴はお酒だけでなく酒かす、奈良漬けなど蔵元直売もしていた。

立派な蔵がお店の正面に建てられ醸造の煉瓦積みの煙突も立派です。 長い歴史の重みを感じる。 しかしお店の形態は晴雲と比べて普通の商店に見えた。 普通の酒屋さんと同じだが店内に入ると、一目瞭然で醸造元と判る。








晴雲酒造と同じように訪問の理由を告げると主人の奥様が案内してくれた。 店内の奥に進むと店構えと違った広い屋内が繋がっていた。 ここでは樽でなく金属の桶が使われている。 上部が密封されていて発酵させているのか、屋内にツーンとお酒のかをりが漂っている。 奥様が清酒の製造過程を簡略化した掲示板を指して説明してくれる。







この先は遠慮して下さいと言われた

■日本酒の製造過程

収穫したお米は玄米で、これを精米して白米にする。
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浸漬、洗米して蒸米に → 段仕込みして新酒が出来る → 新酒が無濾過、生原酒として銘酒が誕生
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蒸米してから麹を加え酒母となる
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酵母と水でもろみを造る
  ↓
もろみに酒の種類によって醸造アルコールを添加する
  ↓
数々のもろみを発酵、上槽して新酒が完成 → これらの新酒が無濾過、生原酒として銘酒として誕生
  ↓
その過程で酒粕やなら漬けの原材料も副産物として造られる

酒造に関わる各種の機械も説明してくれた。 機械は使用時に移動するが、その後は片づけておくようだ。










20分ほどで終わって店先に戻り、陳列棚に並べられた商品を見ていく。 店前は5台ぐらいしかない駐車場があるが地元の人や観光客、なじみの観光客らしい人達が商品を購入していく。 私も試飲は出来ないが、買ってみることにした。 1.8Lの武蔵鶴を購入する。 和紙に包まれ品の良さを感じる。 2580円の純米吟醸酒をリュックの高さと比べてみた。箱詰めでは入らない。 手荷物として持って帰ることにした。










店先に出てあらためて武蔵鶴のロゴや酒蔵の撮影をして駅に戻ることにする。 駅まで100mほどの距離をドロップハンドルにひっかけて走ったらヨロヨロ危ない! 引っ張って歩いて駅前のコンビニで喫煙休憩する。 小川町は東上線の分岐点で越生線に向かう車両が止まっていた。 4両編成の懐かしい車体だ。 一枚撮影してデジカメを収納する。



リュックから輪行袋を取り出し、自転車の分解をはじめ要領よく車体に前後輪を結びつける。 車体にはエアコンのパイプ保護の部材をはさみ輪をしっかりと止めた。 ハンドルは90度傾けて袋に収納し、車体中央に結んだ肩紐の一方を袋から出す。 こうしてチャックをすると肩に担げるようになる。


駅から自宅に戻る時は駅前端で自転車を再度組み立てた。 自宅に戻り最初にすることは武蔵鶴をどのようにして試飲してみるか。 まず常温で一口味わう。 まだ明るい時間帯だが、至福のひと時を過ごす。 こうして初めての輪行旅は無事終了した。 今回の小さな輪行旅の経験を生かして、輪行旅の醍醐味を深めていきたいと思った。
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