■ 知床五湖のドキドキした散策 ■

そもそも知床五湖は無名の沼だったが、1970年代に地元の営林署の職員が積極的な歩道の整備に乗り出したところ、 観光地が無かった知床半島の名所として脚光を浴びたという。 一湖を見渡せる高架木道と展望台が整備され、さらに五湖をめぐる散策ルートが整備された。 高架木道、展望台の往復の所要時間は約40分、五湖の全てを周回する散策ルートは90分を要する。 ヒグマの発見があった場合、安全が確認されるまで、遊歩道、散策道の閉鎖があるという。 駐車場は2001年から繁忙期は有料化され一般車は410円です。

地上散策道の入口

所々に標識


五湖フィールドハウスで散策ルートの説明を聞く。 10分ほどのレクチャーを映像で受けて、守るべき事項を確認した。 係員からパンフレットを貰い地図と地形の概略を確認して私達は時間をかけて全周の散策ルートを選択した。 この旅で一番の楽しみにしていたところです。 ハイキング用のステッキを3本用意して妻は2本を持ち、私は1本をリュックに収納する。 ペットボトルを3本用意し、飴玉も用意した。 他にタオルや紐もリュックに収納する。 「さぁ!出発!」、元気な声かけをしてスタートした。






スタート地点から暫くは低い熊笹が生い茂り疎らに樹木がある林を両側に見ながら歩いて行く。 この辺は間近から遠方まで見通せて歩いていても不安はなかった。 時間は10時45分で、観光客はいなかった。 時々、撮影しないがズームアップして前後左右を覗いてみる。 ヒグマがいない事を時々確認する。






スタートして散策路はやや下りの坂が続く。 だんだん見通しが悪くなる傾向にあり、前後に人気は無かった。 こうなると少々不安になってくる。 周りが見えなくなり前後に人がいないと、どうしても会話が小さくなる。 小心者だからわざと元気な声を出して話をするがだんだん小さくなり無口になりがちです。

 視界が悪くなった。




散策路は整備されたと云っても経年劣化で自然と同化して単なる山々の登山路に近くなった。 必要最小限の整備がされているだけで、山道を歩いているようになった。 道の窪地に溜まった水はけが悪い所は木材が渡っている。 朽ちた倒木も遺産を守るために通行部分だけ取り除かれている。 日本人らしく世界自然遺産知床を守ろうと心配りが施されているわけだ!

 更に視界が悪化!




この付近では人間の生活圏から完全に離れた地域にいることを実感した。 周囲の景観では、東西南北の方向が判らなくなりそうです。 頼りになるのは時間と陽光の位置で向かっている方向が判る。 特にヒグマの出没には十分注意したつもりだが、実際に遭遇したら…。






妻には「もしヒグマと遭遇して被害に遭ったら、俺が餌になるから一目散に逃げろ!」と話した。 妻は「足腰が悪いから逃げられない〜!」、「…」。 こんな会話をしながらドキドキしながら散策道を歩いて行く。 なんか遭難して歩き回っているようだ! そんな話をして歩いていたら、後方から観光客が追い付いてきた。 何か、ほっとした気持ちになった。






五湖までの道のりは結構長く感じた。  後方から追い付いてきた観光客を向えて、老体だからお先にどうぞと声掛けして先を譲った。 暫くはカップルの後ろに付いていく形になったが、次第に離されていく。 知床五湖でのヒグマの出没は山間部であり、生息地にあるため散策道では頻繁に遭遇するという。 観光客が増加するにつれ散策道周辺の踏み荒らしや食べ歩きなど自然環境への悪影響や事故の危険性が懸念されるようになった。 2004年には散策道で遭遇したヒグマに観光客がカメラのフラッシュを浴びせ、襲撃されても不思議ではない事が発生したという。

 五湖に到着! 五湖への岐路

突当りの五湖に向かう

逆光で撮影

長い道のりを歩いてやっと五湖に到着した。 散策路の行程は五湖から一湖まで逆に回るコースです。 五湖の案内板を見ると、標高は239m、周囲400mでそれほど大きな湖ではない。 深さは3mあり大きな窪地に水が溜まっている感じだ。 遊歩道から一本道の木道があり、湖へは往復する形になる。 カップルに優先させて私達は休んで時間をずらした。 カップルが先に行った後で、記念撮影や景観の撮影に入る。 陽光はあるが、紅葉も終わり樹木の肌が際立つ景観です。 従って湖水の色彩も青空と樹林の木肌以外は映えない。






今日は陽が上るにしたがって天気は回復している。 それが救いで知床連山の山並みは雲海が少なく流れがあるので次第に良くなってきた。 撮影も一段落して、また人気が無くなった。 湖畔にヒグマが水を飲み来ないか心配になる。 ヒグマが湖畔に来たらどうしよう? こんな心配をしながら四湖に向かう為遊歩道に戻った。 その時、戻る方向の木道に黒い塊を見つけた。 思わず、「うっ!」と声を出したが、慌てずカメラのズームで樹林の奥を覗いてみた。 大きな樹の朽ちた切り株だった! ホッとして妻に話して歩み出したが背筋がヒヤリとした。



知床連山の山並み

樹の朽ちた切り株だった


奥にヒグマ?

五湖から四湖までの距離は近かった。 ヒグマが周辺に出没した場合、散策道は閉鎖される。 特に、春から夏にかけて閉鎖の頻度が高いという。 常に観光ができるわけでないから運次第か! 自然環境と観光をどのようにして共存させていくかが課題になっている。 でもオホーツク海の観光船の様に波浪で運航中止になることもあるから一概に観光を優先するわけにはいかない。

 四湖に

四湖は右に入って突当り


四湖から三湖まで350m

四湖も五湖と同じ規模の湖です。 特に白い樹林が湖面に美しく映えているのが印象に残った。 散策道から岐路した木道が湖畔まで続き、行き止まりの所に観光客がいた。 その中に一人がカメラを片手に構図を考えている。 撮影場所が狭いから周囲を撮影すれば同じだが、そこはマニアらしくデジカメの機能を生かして撮影していた。 お互いに目が合って目礼したが、私も同様なことを考えている。

四湖

木道上から見える範囲はここまで


観光客が先に進んで私達の順番になる。 狭い場所だから仕方ない。 また私達だけになった。 後から誰か来ないかなぁ! 撮影が終わって再び散策道に戻る。 この先350mで三湖に到着する。 映像の様な道を350m進むのは結構時間が掛かる。 特に足腰の弱い老体が二人だから余計です。 景観を楽しみながら、ヒグマにも注意しての散策は、帰宅後、私達の最高の思い出になった。


三湖に到着したら、今までの湖の形が大きくなり展望場所も複数個所あった。 追い抜かれて先に行った観光客が湖畔沿いの展望場所に点在している。 いつの間にか知床連山にかかっていた雲海は小さくなり青空の範囲が非常に大きくなって私達を喜ばせてくれる。 「南無大師遍照金剛、感謝!」と言葉を発した。

 三湖に到着!



硫黄岳




硫黄岳山頂をズームアップ!

三湖では十分に時間をかけて休憩も含めて撮影。 ここにいても後ろから観光客が追い付いて、今いた観光客は先に進む状況で、水分補給も含めて身体を休めた。 三湖の背景に美しい知床連山が連なり周囲に遮る樹林が無いから展望が大きく広がる。 今日一番の景観だ! そんな思いでデジカメをフル活用して撮影。 妻もデジカメ片手に非常に嬉しそう! 今まで足元に注意しながらの散策だから結構気を使ったはずだ!

旅が終わって東京に戻れば北海道は瞬く間に銀世界に入るだろう。 今年の知床の美はそろそろ終わりに近づいている。

知床五湖の散策も後半戦に入り、旅のメインとなる知床の観光は快晴に恵まれ、良い映像が撮れて満足。 今回の旅は一年計画でプランしたが、妻も大変満足してるのが嬉しい!
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