■ 八甲田山ロープウェー ■
黒石市の道の駅、虹の湖畔の朝は山々に囲まれ黎明が遅かった。 道の駅全体の照明が少なく、建物周辺以外は漆黒の闇で、時々通過する車両のライトの帯が流れる。 久しぶりの車中泊は前日の分も含めてしっかり睡眠できた。
ガソリンが残り少なくどこで給油するか計算した。 道の駅から八甲田山、酸ヶ湯温泉、そして弘前市内までの総距離をナビで計算したら余力がありそうだ。


道の駅虹の湖畔から目指すは八甲田山ロープウェー乗り場。 距離は約27q、1時間以内で到着するだろう。 十和田周辺の道路は非常に整備されて走りやすい。 黒石の中心を抜けて緩い登坂が続くが、7時を過ぎているのに通行車両はほとんどない。

ロープウェー駐車場には8時前に到着したが駐車車両は無かった。 広大な駐車場の真ん中に駐車し付近を散歩。 ロープウェーの始発は8時半だから30分ほど誰もいない場所に一人ぽつんと佇む。 ほどなく社員や業者の人の車が到着して駅舎付近が慌ただしくなった。

八甲田山ロープウェー駅舎



私の車がポッンと…

始発のお客は私一人旅、出発前に構内とロープウェーを撮影する時間を貰った。 ガイド嬢と荷揚げの若者、そして私の3人で頂上駅に向かう。 初めの映像は至近距離が多く紅葉も良く撮れていたが、高度が上がるにつれて視界が拓けてくるが、今回の旅では天候が不安定で映像としては良くない。






遠方に陸奥湾、青森市街がうっすらと視認できるが映像は今一だった。  八甲田ロープウェーは十和田八幡平国立公園の北端に位置し、青森市からも意外と近いことが判る。  40分ほどで山頂駅に到着。  元々、ロープウェーは昭和43年に開業し冬季の山岳スキーを楽しむための施設だったが、 高度成長期になり雪解けとともに自然遊歩道としても利用された。  雪解けとともに数多くの高山植物が咲き乱れ山頂駅を起点に一年を通して多くの観光客が訪れている。

青森市街と陸奥湾



ロープウェー山頂駅

山頂駅の視界はすでに紅葉時期も終わり、そろそろ冬の気配が漂う。 紅葉樹は裸になり針葉樹が目立つ。 駅舎を出てすぐ気が付いたのは遊歩道が凍結していた。 登山靴を履いてきて良かったと、思わずつぶやいた。 遊歩道の端には何やら白い粉が? 氷雪だ。 気温は零下6度の表示ですが風が弱いからそれほど寒くはない。






自然遊歩道の概略図を見て全体を把握。 時間と距離も頭に叩き込み、いざ出発したが、誰もいない遊歩道は未知の探検に出発するようだ! 装備は上下タイツを二枚重ね着してジーパンにシャツを着用し、フード付きのジャンパーです。 登山靴と皮手袋、2本のストックステッキで歩く。 リュック内には500mlのペットボトル2本、帽子、サングラス、タオル2本、飴玉、パン、ゴミ袋、マグライトなどが入っている。 最大の装備は三脚、デジカメ2台、望遠レンズ1本が主役です。

三山展望台からは赤倉岳、井戸岳、大岳の三山が見えるはずだが天候不順で山容は視認できない。 大岳(1584m)を中心として北八甲田山系を形成している。

三山展望台




スタートは暫く登りだったがすぐ見晴らしの良い三山展望台に到着。 視界はあまり良くないが天気が良ければ絶景を予感させてくれる。 撮影してすぐ出発するが、このころから風の冷たさが身に染みる。 防寒の準備をしてきて良かった。 吐く息が白く流れ冷気が強まった感じだ。 熊笹が両側に密集し枯れ木や針葉樹がその間から上に伸びている。

遊歩道は凍結状態




遊歩道に氷雪がこびりつき登山靴の簡易スパイクで踏みしめていく。 ストックステッキのゴム部分を外してステッキが滑らないようにした。 これで上り下りはだいぶ楽になる。 デジカメを首にぶら下げているからガチャガチャとぶつかるので左右に振り分ける。 デジカメは大事な友だ! 暫く歩くと、初めて山上の湿地帯を見つけた。 これが八甲田山特有の火山活動による湿地帯だ!

八甲田山特有の火山活動による湿地帯



遊歩道の分岐点

■八甲田山の命名の由来…
八の(たくさんの)甲(たて)状の峰と山上に多くの田代(湿原)があるという由来がある。 世界でも有数の豪雪地帯で有名だが、明治35年に青森の歩兵第五連隊が雪中行軍の演習中に記録的な寒波に遭遇し200名近い隊員が遭難した事件が発生した。 現在でも陸上自衛隊青森駐屯地の第五普通科連隊も、毎年厳冬期に八甲田山で冬季雪中戦技演習がおこなわれている。 これらの演習は北極や南極地に近い地域での戦技研究として、どの国家でも一般的におこなわれている。 この遭難事件を題材にした小説も刊行されているから読んでみると歴史の一端が理解できると思います。



田茂萢湿原の湖沼群


八甲田山系には田茂萢、仙人岱、毛無岱、睡蓮沼、地獄萢、赤水萢、谷地湿原、横沼萢など数えきれないくらいの湿原が存在する。 これが八甲田山がほかの高山に対して景観上の特異性を持っている由縁です。 元々、十和田湖と同じカルデラを有する火山群だから広い湿原を形成している八甲田火山群です。

遠方に見えた湿地帯が次第に大きく見えるようになった。 田茂萢湿原です。芝の紅葉が残り山岳の上方にこれほど規模の大きな湿地帯は初めてです。 遊歩道は真っ直ぐ湿地帯に向かい次第に眼前に大きく見える。 やがて田茂萢一帯を見渡せる展望所に到着。 早速、三脚を使い紅葉した田茂萢一帯を撮影開始。 湿原の遠景には氷結した樹氷が見え、天候に日差しが無いのが残念です。


田茂萢湿原の湖沼群全景





田茂萢湿原の湖沼群はすでに凍結していて水面に映る景観は撮影できない。 向う側に田茂萢岳(標高1324m)の緩やかな山頂が良く見えた。 八甲田のゴードラインと呼ばれる湿原を8の字の様に巡る遊歩道です。 ここから縦走して登山路を毛無岱に抜けるルートがあり人気のコースでもある。






八甲田はカルデラを有する火山群だが、大きな噴火は無いが山群のいたる所から火山ガスが噴気している。 現代でも噴気による事故が多発してるからガイドには十分注意しなければならない。 湿原展望台の周囲の景観を撮影後、遊歩道に戻り先に進んだ。 遊歩道上から背伸びしても周囲が見にくく現在地が判り難い状況が続く。 目の前に立ち枯れ樹が異様な姿を見せ自然の強さを見せつけている。






人間なんて結局、自然界の中のひとつに過ぎない事を教えてくれる。 少し高い位置から下方に毛無岱湿原帯が見えてくる。 遊歩道から外れて高い位置に立つと現在地が良く判った。 足元見ながら歩く時間が長かったからスタートからずいぶん移動してきたことが判る。 パンフレットではこの先を周遊する形になる。

毛無岱湿原帯




八甲田山が名前の由来通り、多くの高地湿地帯が点在。 他の山岳と比べて景観上の特異性を持ってるのは、この湿原群に因ることが大きい。 ここのやや見晴らしの良い所で休憩。 周囲が見渡せるのは安心だ。 熊などの出現に注意しながら水分補給!
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